漢方薬辞典
はちみじおうがん
八味地黄丸
|説明
◯腎虚+冷え症状に
八味地黄丸は「腎虚」「寒証」に向く処方で、六味地黄丸に補陽散寒作用を持つ附子と桂皮を加えた構成になっています。腎虚によくみられる火照りやのぼせなどの虚熱症状と、冷え・寒気などの虚寒症状が同時あるいは交互に現れる状態に用いられます。
◯腰痛にも有効
腎虚による冷えは、血流の悪化と筋肉の硬化を招き、腰痛を発生させることがあります。そのため、本処方は腰痛への効果を期待して用いられる場合があります。
◯高齢者特有の虚熱症状と虚寒症状に
虚熱と虚寒の療法を伴う状態は高齢者や慢性疾患に多く、この場合には清熱薬と散寒薬を同時に配合された本処方が適切になります。腰痛・残尿・尿もれ・頻尿・尿失禁などによく用いられ、膀胱の排尿筋と内外膀胱括約筋の収縮・弛緩の連携を改善すると言われています。このことから、加齢に伴う諸症状の改善に用いられますが、臨床では病態によって附子の配合量を変化させて利用しています。
◯その他補足
なお、附子が含まれていることから、炎症反応などで局所の新陳代謝が更新している人や熱感がある人、小児の陽証に用いる場合は注意が必要です。また、過量で心悸亢進、のぼせ、頭痛、不眠、舌のしびれ、発疹などが現れることがあります。