漢方薬辞典
うんけいとう
温経湯
|説明
◯冷えの伴う婦人科系の不調に
温経湯は慢性化した「寒証」に向く処方で、皮膚の乾燥などの栄養不良状態に加え、不正出血・月経痛・下腹部痛などがみられる症状に用いられます。特に、冷えのぼせ(お腹の芯から下半身にかけて冷え症状を自覚しつつ、上半身は火照りやのぼせを感じている方)に有効です。
◯身体の芯を温め、不足・停滞を改善
構成生薬のうち、半夏・桂皮・牡丹皮は気血水の循環を改善し、芍薬・川芎・当帰は補血に働きます。特に、川芎(センキュウ)・当帰は駆瘀血作用を有しており、婦人科系疾患に関わる処方で一緒に配合されることが多い生薬です。また、甘草・人参は気を補い、麦門冬は津液を補い、阿膠(アキョウ)は止血作用として働き、桂皮・呉茱萸(ゴシュユ)・生姜は体内を温め、冷えを取り除くように働きます。さらに、半夏・生姜・呉茱萸が配合されているので、悪心嘔吐にも適応します。
◯その他補足・研究豆知識
本処方はゴナドトロピン分泌刺激作用を有し、特に構成生薬である人参・麦門冬は黄体形成ホルモンの放出促進作用が確認されています。また、阿膠以外の全ての構成生薬はプロラクチン放出との関連性が知られており、温経湯を構成する生薬が、性腺刺激ホルモン系と乳腺刺激ホルモン系の調節に関与していることが示唆されています。