漢方薬辞典
にんじんとう
人参湯
|説明
◯消化機能が弱り、温める力が不足した状態に
人参湯は「陽虚」に向く処方で、お腹や四肢が冷えて消化機能が低下し、泥状便や腹痛などを伴う症状に用います。陽虚とは、気虚が進行した状態であり、温める力を失うことで冷えが目立ち、身体中に寒虚の症候がみられることを指します。
◯補気健脾と補陽散寒
人参湯は補気剤としての基本処方であり、補気健脾作用のある人参・白朮・甘草で消化機能を高め、栄養物の吸収を促進して抵抗力や体力をつけていきます。同時に、補陽散寒作用のある乾姜で消化管の血行を促進し、腹中や全身を温めていきます。なお、比較的体力のある方や頑強なタイプの方は、気虚あるいは陽虚まで進行していない可能性があり、本処方を含めた人参が含まれる処方は適していない場合があります。これらの方への処方時は、人参による頭痛やのぼせ、血圧上昇、中枢興奮作用などが引き起こされる場合もあるので、注意しながら使用しましょう。
◯その他補足
なお、甘草が含まれていることから、多量服用による偽アルドステロン症などの副作用には十分注意しましょう。