漢方薬辞典
しょうせいりゅうとう
小青竜湯
|説明
◯寒冷刺激による長引く咳・気管支炎・喘息などに
小青竜湯は「肺の痰証」に向く処方で、寒痰による咳嗽・気管支炎・呼吸困難・喘息・アレルギー性鼻炎などに用いられます。寒痰とは寒冷刺激による症候で、水様の薄い鼻水や痰がみられるのと同時に粘膜の浮腫により呼吸困難や鼻閉が生じます。いわゆる、水っぽい鼻水・薄い痰・湿った咳が出る方への処方に多く使われます。
◯散寒・利水・止咳平喘作用
本処方は、散寒作用の乾姜・桂皮・麻黄が血管を拡張して身体を温めながら血行を正常にし、毛細血管の透過性亢進を抑制する作用を働いています。さらに、利水作用を持つ麻黄・細辛が粘膜の浮腫を軽減させ、止咳平喘作用を持つ麻黄・五味子・半夏・細辛は鎮咳・呼吸困難の改善に働きます。以上のことから寒冷刺激により生じる症候に適合します。
◯眠気のない花粉症対策に
なお、二重盲検比較試験で実施された臨床試験にて、通年性鼻アレルギーによるくしゃみ発作、鼻汁、鼻閉などの症状が改善することが確認されています。また、軽度の花粉症への効果も報告されており、眠気の無い医薬品として第二世代の抗ヒスタミン薬などの一般的な医薬品と並んで選択肢の一つになります。さらに動物実験では、抗アレルギー、抗炎症作用も確認されています。
◯その他補足
なお、甘草が含まれていることから、多量服用による偽アルドステロン症などの副作用には十分注意しましょう。また、麻黄に含有するエフェドリンは交感神経刺激作用や中枢神経興奮作用も知られており、高血圧・心筋梗塞や狭心症の既往や危険のある方、高齢者などには原則として用いない方が良いでしょう。